入試問題と模擬テストの違いについて

入試問題と模擬テストは,似ているようでまったく異なります。
入試問題は,入学者を決めるためのテストで,模擬テストは,入試問題で点が取れるようにするためのテストであり,また,現時点の実力を評価するためのテストです。
ですから,まず作成の方針が異なっています。
入試問題では,出題の意味や意図がよくわからない問題もたまに出題されていますが,入学者の識別という目的のためには,必要な問題なのだと思います。
これと同様の問題を出題すれば,模擬テストでは「良くない問題」「出題すべきではない問題」とされます。
しかし,最近は,この両者の垣根が低くなってきているように思います。
模擬テストは,入試の「模擬」なのだから,ひたすら入試問題にあわせて作ればよい,と考える人が多くなったように感じます。
出題形式を合わせるのは良いのですが,出題内容は異なっていて当然だと思います。
また,入試が実施されるよりも,前の時期に実施される模擬テストは,こういう理解をしてほしい,こういうまとめができるようになってほしい,という思いで作るものだと思っております。
ですから,7月や8月に実施されるようなテストで,入試とほぼ同様のレベルで出題されているテスト問題を見ると,本当にこれでいいのだろうか,という気がします。
入試問題では,ばらばらに知識を問うというのもありだと思いますが,これを模擬テストでしてはいけないと思っております。
現実には,そうした模擬テストの問題も多くありますが,私はそうした問題は作らないようにしています。
理解しているかどうかの結果を問う入試問題と,理解度を見ると同時に,正しく理解し,より深い内容の理解の手助けをする模擬テストとは,この点が大きく異なっているように思います。
とは言っても,最近は,入試問題の「解説」や「解き方」をその学校自身で作成されている学校もあります。翌年に受験してもらう受験生へのサービスなのだと思いますが,こうなると,もはや模擬テストとの違いはないと言っていいのかもしれません。
外部への作成の委託が増え,模擬テストの作成者が入試も作成するようになってきましたから,両者の区別をすること自体,意味をなさなくなってきているかもしれません。
これが良いのかどうか,私には判断できませんが,私は,両者の違いを認識した上で,これからも作成しようと思います。