小学生の記述力について

中学入試問題の模範解答例を見ていると,およそ小学生が書けないような答案例を見かけることがよくあります。
特に,難関校の場合には顕著です。
確かに,文脈を捉えて書く場合には,本文の記述内容を入れるため,文章が難解に見えるのはいたしかたがないところはあります。
しかし,本文の内容を踏まえながらも自由に書いてよい場合でも,首を傾げたくなる文章があります。
本当に,こんな文章を小学生が書けるのでしょうか。
私たちが小学生のころの作文を思い出してください。
「母は,スピーカーが壊れたみたいな声で笑う」とか「ネコにいたずらしたらおかしかった」など,日常の生活の一こまを扱うのが精一杯でした。
また,読書感想文でも,やたらとあらすじを書いて字数を埋め,最後に「そんな主人公がぼくはすごいと思いました。」などと結んでいました。
「すごい」とか「おもしろい」とか,「感動した」とか直接的な感情表現が主で,語彙はきわめて乏しかったように記憶しています。
いやいや難関校を受けるような子は違うんだ,という声もあるかとは思います。
しかし,読書量が他の小学生よりもよしんば多かったとしても,そして,記述の練習をかなり積んだとしても,やはり人生経験が乏しく,日常的に使っている語彙が少ないことからすると,それほどの文章が書けるようには思えません。
ふだんから「私の経験から考えると,人々が幸福を追求する願望が,とみに減少の傾向にあることは理解しがたいのです。」というように話しているような小学生がいるでしょうか。
もちろん,話し言葉と書き言葉は別だと思います。また,確かに,模範解答例のどの言葉も小学生が知らないような言葉はありません。しかし,こういう言い回しは小学生はしない,ということを考えないで書いているようなものが目立ちます。
もし,こうした模範解答を見て,うちの子には記述力がないのだと嘆かれる方があるとしたなら,私は無用の心配だと思います。
模範解答のような答案を書ける小学生は,まずいないと考えていただいて良いと思います。
それよりも,常に,自分の考えをもち,それをはっきりと言えるようにすることのほうがはるかに大切だと思います。
ただし,文章をすらすらと書けないというお子さんの場合には,中学受験をする,しないに関わらず,やはり書くことの練習はしたほうが良いと思います。
文章を書くことは,一生涯求められるからです。
小学生のうちに,とにかく文章をよく書くことは,とても大切です。
それが,作文や日記のような簡単なものであったとしても。
みなさんは,いかが思われますか。