開成中学校の読解問題について

開成中学校の国語科の問題は、毎年のように出題内容が大きく変わります。
そのため、対策が立てにくそうに思えるのですが、文脈をとらえればそれほど難しい設問はありません。
今年の入試では、小説は太宰治の「思い出」から、論説文は内田樹の「もしも歴史が」から出題されました。
どちらも、それほどの長文ではありません。むしろ、やや短い文章となっています。
内容的にも、それほど読み取りにくい文章ではなく、言葉もさして難解なものは使われていません。
それでは誰でも高得点できるのか、というと、いえいえけっしてそうではありません。
まず、選択式の問題が一問も出題されていません。漢字の読み書きもありません。
また、国語の知識(言葉のきまり、語句、ことわざなど)の出題もありません。
つまり、文章をきちんと読み取らない限りは、得点できない問題ばかりです。
設問は、文脈把握、主題に関わるものが中心で、論説文の読解では、記述題が二題のみとなっています。
かなり力の差がつきそうな設問ばかりと言えるでしょう。
この種の問題のやっかいなのは、文章を正確に読み取ることはもちろん、それに加えて出題者の意図をつかまなければならないということです。
例えば、「もしも歴史が」では、問一で文章全体をとらえて要旨を100字以内でまとめる問題が出されていますが、これも「文章全体をふまえて」という条件を無視しては、およそ点数がもらえる解答になりません。
では、こうした問題は、どのようにして解答すれば良いのでしょうか。
実は、解答作成にはコツがあります。
① ポイントになる内容を箇条書きで、それぞれ20〜30字程度でまとめる。
② それぞれのポイントを書く順序と、ポイントを説明し、つなぎあわせる文章を考える。
この作業を行うようにするのです。
100字以内という文字数では、ポイントになることがらは二つ、ないしは三つと考えてください。したがって、ポイントになる内容だけで字数の半分程度が埋まることになります。
「もしも歴史が」の設問では、ポイントは二つあり、一つは「歴史の過去を振り返ることが未来を想像することにつながる」で、もう一つは「歴史に『もしも』を導入することにより、一人の人間が世界の運行にどれくらい関与することができるかを考えることができる」というものです。このポイントを軸にして、二つを合わせていけば正解となる答案をつくることができます。
このように、要旨をまとめる問題では、字数にあわせてポイントを絞ることが大切です。
ところが、次の問二は、それだけでは正解できない、かなりやっかいな問題です。
ここでは、本文内容をふまえて、さらに別の考えを自分の文章で書かなくてはなりません。
しかも、やみくもに自由に記述して良いというわけではありません。
内容が「自分」「歴史」「人生の充実」の三つに触れることが指定されています。
したがって、本文でこの内容をどのように述べているかをとらえ、その上で別の考えを提示しなければなりません。
これは、小学6年生に課すには、あまりに酷な内容だと言えるでしょう。
したがって、開成中学校で合格点の取れる解答を書くには、文章をまとめる力がかなり要求されることがわかります。
逆に、その力を伸ばせば合格に近づくことができます。
ここでの解答のポイントは、まず、本文内容をとらえることです。
「自分が歴史に関わるかもしれないと考えることで人生を充実させることができる」という内容をまずつかみます。
そして、それに対して、例えば「歴史のような大きなものを考えなくても、日々を真剣に生きることで人生を充実させることができる」あるいは「歴史や時代の流れよりも一人一人の幸せを考えるほうが大切である」というような考えをまとめるようにします。自由に書いてよいため字数の指定はありませんが、問一と同様に、100字程度でまとめれば良いでしょう。

ところで、こうした設問に対する練習を積んだとしても、開成中学校では、また来年度は違うパターンの出題となるかもしれません。しかし、どのような問題が出題されたとしても、かなりの読解力と文章力が要求されることは変わらないので、そこに的を絞った日々の練習を怠ってはいけないと思います。
恐らく、高校受験生でもこうした設問に対し、満足な解答を書ける人は少ないのではないでしょうか。
大人の目からすれば、それほど難解な文章でもなく、設問もたいしたことがないと思われる人があるかもしれません。
それなのに、算数はどれだけ考えても答えが出せないと思われるかもしれません。
しかし、小学生がこの文章をとらえることは、きわめて大変なことであり、まして自分の言葉で文章をまとめるとなると、本当に大変なことなのだとわかってあげてください。
文章読解力に関しては、大人と小学生では、天と地ほどの違いがあるのです。
それをよくふまえた上で、問題を吟味してください。
真に読解力や記述力があるかどうかがわかる良問であることがわかることでしょう。