塾選びのポイントについて

受験シーズンを迎え,塾のチラシも多く入ってくる季節となりました。
そこで,塾選びのポイントについて少し話をしたいと思います。
塾(特に大手進学塾)は,アピールできるものを見つけ,それをさかんに宣伝します。
例えば,難関校への合格者数や合格率などです。
小規模な塾や個人塾は,数の上では圧倒的に不利ですから,全員第一志望校合格や成績の伸びなどを宣伝します。
塾は,志望校に合格することを目的として通うわけですから,自分の志望校に何人の合格者を出したかが気になるのは当然です。
しかし,よくよく考えてみてください。
例えば,中学受験をしない小学4年生の子が,将来の高校受験校を考えているでしょうか。
あるいは,中学一年生でも良いです。中学入学と同時に志望校を明確に考えているでしょうか。
そう考えると,難関校合格者数よりも,どんな授業をするかということのほうが大事ではありませんか。
最終的に,人気の高い難関校を受験することになるにしても,それまでに十分な学力を身につけなければなりません。
難関校に多くの合格者数を出している塾は,もともと入塾テストが難しく,ある程度学力が高い生徒が多いということも考えておかなくてはなりません。
しかも,その全員が難関校に受かるわけでもなく,一部の生徒だけが難関校に合格しているに過ぎません。
その一部の限られた一人になれると信じて通っても,多くは挫折してしまいます。
こうした塾のトップクラスで使用しているテキストは,あまりにも学力と乖離したものとなっていることが多々あります。
たとえて言うなら,中学一年生にいきなり高校受験用の教材で学習させるようなものです。
これでは,伸びる子も伸びません。
本当は,使用するテキストをじっくり見て判断するのがいちばん良いのですが,テキストのレベルというのは,ある程度の知識がないと適切かどうかがわかりません。
ですから,使用テキストを見ることは大事ですが,それでは判断できない場合には,やはり授業の進め方がきちんと示されているかどうかをポイントにされると良いと思います。
合格者数だけを大々的に発表しているだけで,授業に関することに何ら触れていないような塾は,避けられたほうが無難だと思います。
どのような授業をするかがチラシやパンフレットからつかむことができないような塾では,きちんとした考えのもとに授業が進められているとは考えにくいからです。
1クラスの人数をどうするか,定期テスト対策はどのように行うか,ふだんの学習進度はどのようにしているか,理解不足が生じたときにはどのような対策を立てるか,宿題はどうするか,また宿題のチェックはどのように行っているか,志望校別の対策は立ててくれているか,そして,何より授業をわかりやすくするためにどのような工夫をしているかが明確に伝わってくるかどうかをチェックしてみてください。
どれも具体的に示されているものが良いと思います。ただ「やります」だけでは,どのようにするかがわからないですし,実際にはほとんどされない場合もあります。
さて,次に塾に長期間にわたって通うとなると,経営的なことも考えておかなくてはならないと思います。
教室や講師の人件費などの固定費や広告費が多大にかかる塾は,実は採算性の悪い業種の一つで,大手塾であっても赤字に転落しやすい体質をもっています。
3年のうちに3分の1がなくなる,と言われるほど厳しい世界なのです。
経営が苦しくなってきている塾の見分け方としては,次のようなことがあります。
① 広告が少なくなる。(もともとほとんど宣伝をしていない個人塾を除く)
② 過剰なサービスをし始める。(例えば,入会金や授業料の免除,割引,合格保証制度,景品など)
③ 授業の担当講師や時間割の変更が多くなる。
④ 休講が発生する。(台風や流行病などの特別な場合を除く)

①〜④の順に経営が悪化していっていることがわかります。
もちろん,これは保護者側がつかめる判断材料であって,通っている生徒自身は,生徒数が少なくなってくればわかります。ただ,それを誤魔化すために,クラス割りを変えたり,新しいコースを設けたりするようになりますので,すぐには気付かないことがありますから要注意です。
また,①〜④は生徒のためであるかのように発表されることが多いのですが,過剰なサービスは,何とか採算ラインにもっていきたいための処置ですし,講師や時間割の変更にしても,もともとの年間カリキュラムを変更せざるを得ないというのは,生徒のためではなく塾側の都合に過ぎないと思ったほうが良いと思います。そして,突然の休講が発生するというのは,実は末期症状なのです。塾のサービスの基本は,授業です。その商品である授業を提供しないというのは,講師を確保できなくなっている状態で,もはや塾としての形をなしていないと考えたほうが良いと思います。
こうしたことも念頭に置きながら,後悔のない塾選びをしてください。