予想問題の的中について

模擬テストというのは,文字通り入試問題の「模擬」ですから,いわば入試予想問題となっています。
ただし,年間を通して実施するテストの場合には,理解してほしい内容や入試で問われるだろうと思われる内容を年間を通して出題するようにしているため,いわゆる入試予想問題とはなっていません。
また,受験人数の多い模擬テストについては,公立高校の入試問題の場合,各都道府県の教育委員会で入試問題との重なりをチェックされますので,まず同一の問題が出題されることはありません。
しかし,年を明けた1月,2月で実施される模擬テストについては,すでに入試問題を作成し終わっているため,同一の問題が出題されていたとしてもそのままスルーされます。
したがって,予想問題としての真価が問われるのは,1月,2月の実施回となります。
ここで補足をしておきますと,たいていの都道府県はいくつかの種類の入試問題を作成しておいて,その中から,模擬テストでの出題や学校の授業の進捗などを考慮して,最終的に実施する入試問題を選ばれます。ですから,模擬テストと大問単位でほとんど同じという問題が入試で出題されることはまずないとお考えください。
もし,あるとすれば入試直前の回の問題です。
実際,私自身の場合も,国語の素材文や社会の記述題などで,まったく同じものが入試で出題されたのは,この直前回の模擬テストがほとんどです。
直前回は,かなり入試問題の出題レベルや内容を意識して作成しますので,そのためということもあるかもしれません。
もちろん,教育委員会も全部の模擬テストをチェックすることはできませんし,どれだけ丁寧にチェックしているかはわかりませんので,必ずしもすべてに適合するわけではありません。
ですから,おおよその目安としてお考えください。
大学入試でも,センター試験遠藤周作氏の作品が出題されるという情報が漏れたと騒がれたことがありましたが,情報が事前に漏れるのはきわめて重大な問題です。
ただ,実際に照らせば,もしこれだけの情報であったなら,前日に何らかの対策ができるかというと,はなはだ疑問です。
よしんば,出題作品まで分かっていたとしても,どのような問題が出題されるかはわからないでしょう。必死になって遠藤周作氏の作品から出題されている問題を探して解いたとしても,同じ箇所が出題されているとは限りませんし,同じ箇所であっても設問内容は変わっていることでしょう。そう考えると,試験前夜にするべきことではないかもしれません。
ただし,国語の場合には,一度解いたことのある素材文で出題されると,やはりかなり有利になるのは確かです。実際,現代文でも古文でも,同一の素材が出題されると受験生からも実施会社からもかなり感謝されます。
残り5分…まだ古文はまったく手付かず,ああもう駄目か…と思いながらふと見ると,「おお,これは以前に出題されていたのと同じ文章だ! これなら内容を覚えている!」と嬉々として解答に取り掛かる,ということは何度となく聞いた話です。
こうした声を聞く度に,「そうか,それは良かったな」とこちらも涙が出るほど嬉しくなります。
狙って当たるものではありませんが,この問題は解いてほしい,と思って出題した問題が的中すると,この仕事をしていて良かったと思います。
受験シーズンに突入すると毎年思うことを,ふと書き留めておきました。
みなさんの参考になりましたか?