解説の書き方について

模擬テストや問題集などでは,ほとんどのものに解説がついています。
その分量はまちまちで,中には問題のページ数よりも多いものもあります。
こうした分量の多い場合には,あまり問題はないのですが,分量が少なく,簡略な解説となっているものに,プロの目からすればおよそ考えられないような解説がたまに見られます。
例えば,次のようなものがあります。
① 問題のなぞり
 (例1) He ( ) to the station yesterday. でwentを入れる問題の解説が,「He went to the station.となる。」というようなもの。
 (例2) 日本は先進国に含まれる。(  )まだまだ遅れているところはある。
 (  )に「しかし」を入れる問題で,解説が「日本は先進国に含まれる。しかしまだまだ遅れているところがある,となる。」というようなもの。
 つまり,問題に解答を入れたものを示すだけのようなもので,これを「なぞり」と呼んでいます。例は,わかりやすい簡単なものを示しましたが,この種の解説は意外と多く,また,それほどおかしいと思わない人も多いようです。
 しかし,解答を見れば明らかなものをわざわざ解説で示す必要はありません。執筆の初心者がよく陥るパターンです。
② 説明不足
 (例1) He ( ) to the station yesterday. の解説が「この場合,go の過去形のwentが入る。」というようなもの。
  「なぞり」にはなっていませんが,なぜそうなるのか,どう考えれば正解できるのかが示されていません。
  (例2) 日本は先進国に含まれる。(   )まだまだ遅れているところはある。
 (  )に「しかし」を入れる問題で,解説が「この場合,逆接の接続詞の『しかし』があてはまる。」のようなもの。
 これも,「なぞり」にはなっていませんが,あてはまるものを示しただけで,なぜ逆接の接続詞が入るのかが示されていません。
③ 励ましせりふ
 「wentが入るのは明らか」や「『しかし』が最もふさわしい」など,解説の結論だけを書いて終わっているもの。
 あるいは,それもなくて「動詞の過去形に注意しよう」「間違わないようにしよう」「接続詞はしっかり覚えておこう」という励ましや注意喚起のみで,これはもはや解説ではありません。問題の「講評」で入れるべき内容です。


実は,②や③はベテランの執筆者でもときどき書かれる方があり,こうしたものが多い場合は,全面的に書き直しをします。
解説というのは,問題を解く上での着眼点やミスしやすい内容を示し,次からは正解できるように導くためのものです。その意味では「気づき」をあたえることが重要となります。
「これに気づけば良かったんだ」と思ってもらえるようなものが役に立つ解説です。
上記の①〜③のような解説は,いずれも「気づき」の要素がありません。だから,生徒の役に立たない解説となっているのです。
丁寧な解説や気づきにつながる解説があって,こうした言葉を入れるのならば,まだ良いのですが,こうした解説だけでは生徒のための解説にはなっていないと考えます。
社会科や理科で事実をそのまま書いただけのような解説や,間違いやすい途中式が省略された数学など,どの教科にも同じような解説は見られます。
これらは,一見しただけでは不備が見つけにくいものなのですが,生徒が読んで「わかりにくい解説」だと感じるだろうと思います。
生徒の目線で解説が書かれているかどうかが大きなポイントとなります。
上記のような解説を書く作成者が出題している問題は,いわゆる良問はまずないと考えて良いと思います。
生徒の目線で練られていない問題に,良問が生まれることはありえないからです。
解説は,出題者が出題の意図を伝えるメッセージにもなっています。
解説を見ただけでどのような問題が出題されているのかがある程度予想できるようなものが,生徒の役に立つ解説だと思います。
解説を見る機会があれば,上記のようなパターンになっていないかどうかチェックしてみてください。面白い発見があるかもしれません。