クレーマー対策について(2)

具体的なクレーマーの対策について考えてみましょう。
出題に対するクレームで最も多いのは,「教科書に載っていない」「授業で教えてもらっていない」というものです。
不思議なことに,成績の良くない生徒であっても,教科書に載っているかどうかだけはよくわかるのです。
それほど,記憶しているなら,もう少しできても良さそうなものなのですが,本当に不思議です。
特に,教科書改訂の直後の年に,こうした苦情は多くなります。
例えば,ある教科書では,「促成栽培」の説明をやめ,「施設園芸農業」の説明のみになったことがありますが,当然のごとく,「促成栽培」はその後も出題されています。また,授業でも恐らくは触れられていることでしょう。
実は,重要事項であっても,教科書の改訂時に掲載されていたものが掲載されなくなったり,また,その次の改訂で再び掲載されるようになったりしていることがらは多くあります。
太平洋ベルトにしてもそうです。一時期,掲載されなくなりましたし,太平洋メガロポリスなどという言葉に変わったこともありましたが,さすがに馴染まなかったようで,この表記はやめられました。
永年教えておられる先生や,永年出題をしている作成者は,教科書の掲載や不掲載に関係なく,重要なことがらは教えますし,出題します。
そのためクレームとなることがあるのです。
では,こうしたクレームにどう対処すれば良いのでしょう。
教材に関わらずですが,「載っていない」という事実を突きつけられて,それが本当なら,いくら否定しても感情がこじれるだけで,何ら解決になりません。
そんな時は,出題や授業の意図を伝えればいいと思います。
「理解を深める上で大事だと思われることを出題している」というようにです。
さらには,「今年度の○○県の公立高校をはじめ△△高校など,多くの学校で出題された」
「改訂前の教科書ではゴシックで表されていて,重要事項である」などという事実を伝えます。
ここで大切なことは「事実」だけを言うことです。「〜と思う」というように,思っていることを言っても,あまり効果はありません。
事実を言って,相手に判断していただくのです。
重要事項であれば,頭の片隅に残っていることが多く,「促成栽培」っていうのは知っている。確かに重要なものかもしれない。入試で出題されているというのも事実だろう,と考えているうちに,クレームをいう根拠が薄れてきてしまいます。
江戸時代の三大改革や徳川綱吉の記述もよく変わりますし,扱いも大きくなったり,小さくなったりしますので,クレームがおこりやすいところです。
この場合も,例えば享保の改革での「目安箱」が掲載されていないというクレームであるなら,先と同じような対処で良いのではないでしょうか。恐らく,「目安箱」ってどこかで聞いたことがある,と記憶をたどっていただければ,クレームの根拠が薄れていくはずです。
クレーマーというのは,「ミス」だと認めれば,どんどん感情を高ぶらせてしまうことが多いので,出題の意図や事実だけを伝えるのが効果的だと考えています。
もともと,仮にそれが正解できたとしても,18点が20点になるだけのようなケースが多く,教科書で詳述されているようなこともほとんど正解していない場合が多いので,クレームをいう根拠が弱い場合が多いのです。
きわめつけは,クレームの対象となっている問題の正答率を伝えることかもしれません。
「その問題の正答率は82%でした」というものです。
ただ,これは決定打になることもありますが,相手の感情を逆なでしてしまうことにもなりかねません。
あまり追い込んでしまうと,さらに理不尽なクレームを並べてくることがありますので,それは避けたほうが賢明だと思います。
この理不尽なクレームというのは,もはや出題内容でも,授業の内容でもなく,プライベートな領域に入っています。
○○模試では,どれだけの成績だったのに,今回悪いのは出題が適切ではなかったからだ。
授業に欠席したのに,十分な対策を講じてくれなかった。
体調が悪かったのに,無理やりテストを受けさせられた。
など,黙って聞くしかないようなことを並べられます。
こうならないように,まずは相手の言い分を最初によく聞いて,それに対して「事実」のみを伝え,感情をクールダウンしてもらうことが,とりあえずの対処ではないかと思います。
いやいや,もっと良い方法があるよ,という方は,是非お聞かせください。