家庭学習教材について(続き)

家庭学習教材については,教科書はあまりお勧めできない話をしました。
それでは,どうすれば良いのか,と思われた方も多いと思います。
歴史漫画や学習漫画は,とっかかりとしては良いのですが,こうした漫画を何度読んでも,入試で得点することはできません。
やはり,しっかりした教材で学習する必要があります。
教材は,大きく二つのタイプに分かれます。
一つは,文章で詳しく説明してくれているものです。
たまに授業を再現しているかのような教材を見かけますが,これなどがこのタイプになります。いろいろなことが関連づけられますし,因果がはっきり理解できるので,特に初級学習者にとっては有効です。ただ,難点は,内容が特定のものに偏り,全体を網羅していないことです。しかし,考え方,捉え方が身につきますから,全体をまとめている教材を見ても理解しやすくなると思います。
もう一つは,箇条書きのような形で全体をまとめているものです。
部分的な理解を構築し,全体像を見ていくのに有効です。
私は,この両方が必要だと思っています。
複数の教材を買う余裕がある場合には,なるべくタイプの異なるものを買うように勧めます。
たまに,何でもかんでもまとめた分厚い参考書を何冊も買われる人があるのですが,これはどうかと思います。
300ページを越すような参考書は,わかりにくいところを理解するための「参考」にするものであって,全ページを読んで理解するためのものではないと思います。
私は,初級学習者には,なるべく薄いものが良いと考えています。
ページ数が少なければ,いきおい重要事項のみしか扱えないので,重要事項を理解するには,そのほうが都合が良いと思います。
いやいや,分厚い参考書でも,重要事項は書かれているし,大事な語は太字にもなっているよ,とおっしゃられる方もいますが,初級学習者にとっては,重要事項とそうでないことの識別をすることは難しく,いっぺんに理解していけるほど,人間の頭はうまくできていないと思うので,なるべくなら避けたほうが良いと思います。恐らく,理解が進まず,「難しい,わからない」という思いを抱き,そして勉強が嫌になると思います。
理解をスムーズにするには,段階ごとに教材を変えるのが有効だと思います。
もちろん,経済的なことが絡んできますので,どうしても,というわけにはいきませんが,少なくとも,経験の浅い家庭教師を頼まれるくらいなら,そのほうがはるかに安くつきますし,有効だと思っています。
すばらしい授業は,力を伸ばしていってくれます。しかし,本当に理解を定着させるには,自分で読んで理解しなければいけないと思います。
一度の授業で理解できることには限りがあるからです。
そうしたことを踏まえて,家庭学習教材をお選びください。
では,具体的に何が良いのか教えてほしい,と言われる方は,是非,書店に行って良さそうだと思うものを手に取り,2ページほど読んでみてください。あるいは,直接お子さんに読まさせてください。それが,すんなりと理解できるようなら,何ら問題のない教材だと思います。
教材には相性もあるので,すべての人にお勧めできるものはないのです。
中学受験で定番になっている予習シリーズにしても,教材そのものは良いと思うのですが,予習シリーズをすんなり理解していけるお子さんは限られると思います。いくら良くても,わからないことが多いものを無理やりさせるわけには行きません。また,覚えるべき,理解しておくべきことはまとめられていますが,なぜそうなのか,という説明が十分でないため,まったくの初級学習者には不向きです。
「うちの子,予習シリーズが全然わからないらしくて,中学受験は無理なのではないかしら」というのは,いささか諦めが早すぎるように思います。恐らく,段階を経ていないからだと思います。予習シリーズは,本来は自習用教材ですが,それを使って授業されることが多いのも,やはり自習ですんなり理解できるお子さんが少ないからなのでしょう。
以上のことをご参考にして,教材選びをしてみてください。