入試問題の過去問利用について

入試問題の過去問の利用解禁が話題となっています。
昨年に発表された方針ですが,その後,出題者の間でも大きな関心を集めていました。
センター試験での出題においても,過去の出題を避け続けていこうとすると,大変な労力を強いられますし,また問題の質を保つのも難しくなります。
良問をつくるためには,必要なことだと思います。
大学入試だけではなく,公立高校の入試でも過去に他の都道府県で出題された文章が使われることが多くなったように思います。
しかし,これは他の都道府県で使われた文章を流用しているわけではなく,綿密な出題チェックをしなくなったために,たまたま使用する文章が重なったと考えるべきだと思います。
それは,まったく同一の文章にはなっていないことから分かります。
同じ場面の文章であったとしても,前後に文章があったりなかったりしていますし,中略があったりなかったりの違いもあります。
過去に出題されたことのない作品が同じ年にいくつもの都道府県で出題されることがありますが,この場合,やはり引用箇所が異なったり,同じ箇所でも,文章の引用箇所が微妙に違ったりしていますが,これと同じと考えて良いと思います。
つまりは,まったく文章が同一になることは,流用していない限りはありえないということです。
したがって,過去問の使用が問題となりやすい国語科においても,過去問の利用に対してそれほど神経質になる必要はないように思います。
それよりも,よく練られた良問を出題するほうに精力を傾けてほしいと思います。
ただ,こうした過去問利用の解禁は,ややもすると,安易な出題に走る傾向があることが危惧されます。
けっして,そっくりそのままの流用を認めているわけではないのに,ほとんど同じ問題を出題してしまうということが起こり得るからです。
仮に,もとの出題がかなりの良問であったとしても,問題作成者としてはしてはいけないことだと思います。
必ず,作成者の出題意図が明確となるような問題になっていなければならないと思います。
そうでないと,単なる「盗作」になってしまいます。
もちろん,この「盗作」は,けっして認められているわけではありません。
過去問の利用が解禁された今,作成者の資質がより問われるようになったと思います。
大学にしろ高校にしろ安易な出題をするようになれば,その学校は必ず凋落の道を辿ることになると思います。
なぜなら,入学試験こそがその大学や高校の学生や生徒の質を決める最大のものとなっているからです。
安易な出題をしているところに優秀な学生や生徒は集まらなくなります。
ある私立中学校では,毎年地理分野で出題するところは,国内外を問わず必ず現地に行き,写真も撮って,そこで詳細な資料を集めてから出題されていると聞きます。
出題者自らが撮影した写真や集めた資料を使った問題は,全国のあちらこちらの学校で毎年必ず出題されています。
こうした出題をしている学校は,やはり伸びていると思います。生徒の人気も高まっています。
よく練られた良問を出題される先生は,授業も工夫されていますし,恐らく理解もしやすいだろうと思います。また,こうした問題はさまざまな問題集などに使われますから,それだけ学校の知名度も高まることになるでしょう。人気が高まるのは当然だと思います。
ですから,今こそ,問題作成者は,出題に対する真摯な姿勢をもつ必要があるのではないでしょうか。
みなさんは,いかが思われますか。